能ある狼は牙を隠す


そんな声掛けがあって、みんなそれぞれ友達と向き合い始めた。

班は四、五人が目安だと言われて、私は指折り数える。
カナちゃんとあかりちゃんと同じ班を組むのは暗黙の了解だから、あと一人か二人。

席を移動する人も出てきたから、無法地帯だ。
私とカナちゃんは席が前後で、あかりちゃんは自分の席を立つと私たちの方へと駆け寄ってくる。


「やっほー! 修学旅行とかテンション上がるね!」

「ねー。もうそんな時期なんだなあ」


あかりちゃんとカナちゃんの会話をのんびり聞いていると、


「あっ、白さん白さん!」

「九栗さん、どうしたの?」


彼女は持ち前の明るい声で私を呼ぶと、「あのね」と表情を翳らせた。


「もし良かったらだけど、白さんたちの班に入れてもらえないかな」


遠慮がちに頼み込んでくる彼女に、私たちは顔を見合わせる。

九栗さんは基本的にバレー部の人と一緒にいることが多い。
今回の班決めもそうなのかなと思ってたんだけれど。


「私はいいけど……」

「うん、私も大丈夫だよ」


あかりちゃんとカナちゃんが頷く。
私は迷った末に、質問することにした。


「あ、あの、全然いいんだけどね。九栗さん、その……大丈夫?」

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