能ある狼は牙を隠す
破顔一笑
私は何か、粗相をしてしまったんだろうか。
そんなことをぼんやり考えながら、目を伏せる。
「白さん、大丈夫?」
坂井くんの声で我に返った。
私は「ごめん、大丈夫だよ」と苦笑して、止まっていた手を動かす。
今日は夏休み前、最後の委員会だ。
結局、狼谷くんがどうしてあんなに苦しそうな顔をしていたのかは分からなかった。
テストが終わって勉強を見てもらう必要がなくなったから、彼と話すきっかけも然り。
それどころか、狼谷くんはあの日以降学校に来ていなかった。
先週の金曜日、彼の酷く傷ついたような目を見て、それからもう一週間が経つ。
狼谷くんはいつも何だかんだ委員会には来てくれていたから、今日ももしかしたら。
そう期待していたけれど、彼はとうとう現れなかった。
だから今日こうして、坂井くんが代わりに出席してくれている。
「それよりありがとうね。坂井くんも色々忙しいのに……」
「いやいや気にしないで」