能ある狼は牙を隠す
ふは、と吹き出した彼に、目を見開く。
最近、狼谷くんは本当によく笑うなあ。
いろんな表情を見せてくれるようになった気がする。
「だ、だって、優しすぎだよ」
「そんなことないよ。ちょっと気になっただけだから」
分かんないとこ出てきたら言ってね、と付け足して、狼谷くんは自分の席へ戻っていった。
それを呆然と眺めていると、前方からカナちゃんが「ちょっと」と身を乗り出してくる。
「なに今の!? びっくりしたんだけど!」
「うん、私もびっくりしたよ……」
「いやまあ前から片鱗はあったけどさ……こんな普通に話しかけてくるのは意外だったなあ」
さらにメッセージのやり取りもしてるだなんて言ったら、卒倒ものだろう。
カナちゃんは私の顔をじっと見て呟いた。
「羊、懐かれたね」
正しい表現かどうかは置いといて、確かにそれは私も思う。
「……いや、見つかったっていう方が正しいのかな」
と訂正したカナちゃんに、思わず首を傾げた。
狼谷くんから逃げたり隠れたりした覚えはないんだけどなあ。
「えー! いいじゃん楽しそう、行こ!」