能ある狼は牙を隠す
空いていた右手を流れるような動作で繋がれた。
ぶわ、と顔が熱くなって、心臓が落ち着きなく騒ぎ出す。
仲良くするって!? 仲良くするって何!?
すぐ近くを歩いているカップルも手を繋いでいるし、それと同じことをしている自分に訳が分からなくなった。
「はは、そんな固まんないでよ。周りカップルばっかりだから、こうしないとちょっと浮いちゃうかなって」
「そ、そっか……うん、そうだよね……」
色々経験豊富な狼谷くんが言うんだから、そうなんだろう。よく分からないけど。
カップルじゃないと来ちゃダメみたいな感じなのかな。知らずに来ちゃった。
狼谷くんに引かれるがまま歩いていると、前の方から浴衣を着た集団がやって来るのが見えた。
『浴衣着ちゃおうかな〜』
『せっかくだもん、着ないと損だよ!』
教室でそんな会話を繰り広げていた女の子たちと同じ声が、私の耳に入ってきた。
「すご〜! めっちゃ綺麗!」
「写真撮りたいんだけどー! みんなで撮ろー!」
間違いない。
みんな髪を結わえていたり、メイクをしたりしていつもより印象が違うけれど。
その後ろには男の子たちもいるし、確実にそうだ。
「あれ?」