能ある狼は牙を隠す
何気ない話をしている最中、そんな質問が飛んできた。
うーん、と宙を見つめながら考える。
「カナちゃんとあかりちゃんと遊びに行って、お盆におばあちゃんのところに行って……」
羅列しようとしたところで、思いのほか予定がないことに気が付いた。
仮にも花の女子高生なのに、小学生並みの回答だ。
「宿題は頭にないんだ?」
狼谷くんが揶揄うように言う。
「えっ、あ、もちろんやるよ? まだ、もうちょっと先でもいいかなあって……」
「羊ちゃんって意外と宿題溜め込むタイプなんだね」
「バレました……?」
叱られた子供みたいな気分だ。
首をすくめていると、狼谷くんはすうっと目を細めた。
「じゃあ、一緒にやる?」
「え?」
「一人だとやる気起きなくない? 誰かと一緒の方が捗るかなって」
確かに。部屋にいても絶対手をつけないし、かといって図書館に行くのも億劫だし。
それは名案だ、と私は馬鹿みたいに頷く。
「いいね! 監視してくれる人がいると助かるよ」
「ほんと? じゃあ決まり」