能ある狼は牙を隠す
行住坐臥
じゃーんけんぽん、という掛け声に合わせて咄嗟にグーを出した。
周りは全員パーを出していて、綺麗な一人負け。
「あ〜……ツイてないね、羊」
こちらに視線を投げて苦笑したカナちゃんに、私は肩を落としてみせた。
じゃんけんはいつも弱いけど、今回は本当に運がないなと思ってしまう。
「おーい、女子の文化委員決まったか〜」
教卓の前で先生が急かしてくる。
気分が下がったままの私の代わりに、「白さんですー!」と誰かが答える声がした。
「ちょっと。死刑宣告受けた被告人みたいな顔しないでよ」
あかりちゃんが強めに背中を叩くから、思わず飛び上がった。
「うう、だって……」
こんなの、死刑宣告みたいなもんだよ……。
文化委員はちょっと特殊だ。
他の委員は前期と後期、つまり一年に二回選び直す。
でも文化委員だけは通年の任期になっていて、春に決めたら進級するまでそのまま。
やることが多くて、半期ごとに仕事を覚え直すのが煩わしいからそうなっているみたい。
それと、憂鬱になる理由がもう一つ。
「じゃあ白と狼谷、よろしく頼むぞ」