能ある狼は牙を隠す
海闊天空
バレーボールが軽やかに宙を行き交う。
その行き先を目だけで追いかけながら、私は自分の両膝を抱え込んだ。
「やっぱりこないだのNステ、最高だったな〜! 新しい衣装めっちゃかっこよかった!」
「あー、でもちょっと露出多くない? 可愛さで売ってる私の推しにはセクシーすぎた気がするわ」
カナちゃんとあかりちゃんが横で座り込み、話に花を咲かせる。
午後の体育は眠気覚ましになってちょうどいいと思うけれど、あいにく私は運動神経が良くない。
さっきも顔面でパスを受けて、みんなの爆笑をかっさらってしまった。
「あ、男子の試合白熱してるね。向こうはバスケかぁ」
カナちゃんの言葉につられて顔を上げると、仕切りのネットの向こう側ではバスケの試合が行われていた。
「男子の試合って迫力あるからついつい見ちゃうよね」
「分かる。スポーツやってる時、何であいつら三割増でかっこよく見えるんだろ」
靴が床を擦る音に、ドリブルの振動。
走り回る男子たちはみんな汗だくで、顔つきも凛々しい。
その中で一際目を引くのは、素早い動きでボールを運んでいく津山くんの姿だ。
そういえばバスケ部だったっけ、と首を捻る。
「玄! 頼んだー!」