能ある狼は牙を隠す


カナちゃんが眉毛をひくつかせる。


「今までって何? もしかしてだけど、休み中に何かあった?」

「えーと……」


気迫に負けた。
狼谷くんと勉強したことや一緒にご飯を食べたこと。洗いざらい話して、私はようやく一息つく。

カナちゃんはというと、額に手を当てて項垂れていた。


「やられた……うちの羊が……しかも母親公認って……」

「そ、そんなんじゃないよ! 狼谷くんのお母さんにはちゃんと誤解だって伝えたし……」


最後には納得してくれていたから、問題ないと思うんだけれど。

それに、と付け足して私は苦笑した。


「狼谷くん、私のことは友達だってはっきり言ってたよ。だからこんなに優しくしてくれるんだと思う」


彼の人間関係は、狭く深く、な気がする。
私もどちらかというとそうだ。気の許せる人とゆっくり話す方が性に合っている。


「……友達、ね。まあ二人がそう思ってても、周りから見たらどうかはまた違う話だから」


苦々しげに息を吐くカナちゃんの言葉に、「え」と思わず声が漏れた。


「だって二人、すごい距離近いよ。明らかにこう……休み中に何かありましたって感じの雰囲気出てる」

< 236 / 597 >

この作品をシェア

pagetop