能ある狼は牙を隠す
つらつらと述べられて、私は言葉に詰まった。
『……友達、ね。まあ二人がそう思ってても、周りから見たらどうかはまた違う話だから』
そっか、そういうことだったんだ。
狼谷くんが私のことを友達だと言い切ったって、私が狼谷くんを友達だと思っていたって、そんなことを周りは考慮してくれない。目で見たものが全てだ。
「え、付き合ってないの? 噂になってたし、もうとっくにくっついてるもんだと思ってたわ」
霧島くんが目を見開く。そして次の瞬間、彼は何の気なしに告げた。
「結構お似合いだと思うけど。付き合っちゃえばいいのに」
「えっ……!?」
お似合い!? 私と狼谷くんが!?
「いやいやいや! 無理だよ!」
「何で? 狼谷のこと好きなんじゃないの?」
「え、わ、私が?」
次から次へと想定外の言葉が飛び出してきて、処理が追いつかない。
霧島くんは首を傾げて、さも当然のように言う。
「白さん、いつも狼谷のこと見てるじゃん。違った?」
多分、一番驚いたのは私だったんじゃないかと――そんな気がした。
全く警戒していなかった箇所をつつかれたような、そんな感覚で。ただ呆然と、脳内で彼の言葉を反芻することしかできなかった。
「あ、白さ〜ん! ごめん、お待たせ!」