能ある狼は牙を隠す
喉からやっとの思いでそう絞り出す。
津山くんは口元だけ緩めて、小さく息を吐いた。
「玄も白さんも友達友達って言うけど、実際はどうなのかなと思って。本音なのか、それとも」
建前なのか、ね。
そう言って、彼が僅かに首を傾げる。
すっかり止まってしまった自分の手に視線を移して、私は黙り込んだ。
本音なのか、建前なのか。そう問われたなら、答えは本音だ。
狼谷くんとは仲良くしてもらっていると思うし、彼だって私のことをそれなりに慮ってくれていると分かる。
それでも、津山くんの言わんとしていることが理解できた。彼は私を揶揄っているわけではない。確かめているのだ。
――狼谷くんのことを異性として見ているのか、と。
それは果たして、狼谷くんの友人として私を品定めしているのか。はたまた私に再度の忠告を与えようとしているのか、それは定かではないけれど。
見透かされているような気さえする。私の気持ちを、私よりも彼の方が説明できてしまうのではないかと思うほど。
「……友達だよ。狼谷くんは、友達」