能ある狼は牙を隠す
SS 単刀直入 ―Misaki Tsuyama―
で、結局怒られるんだよな俺は。
自らの行く先を案じて、大きなため息を一つ。
隣に友人を連れて、学校近くのカフェに立ち寄った。
流れからして俺が奢ることになるんだろうな、と早々に見切りをつけ、カウンターで注文をする。
「あ、すいません。チョコレートモカ一つと――」
ベリークリームラテ一つ。そう続けようとした時だった。
「キャラメルフラペチーノ一つで」
「えっ」
それまで黙りこくっていた玄が、唐突に口を開いた。
呆然と彼の横顔を凝視していると、「何」とぶっきらぼうに問われる。
いやいや、何って。疑問しかないんですけど。何? 急にキャラメルフラペチーノって何? こっちが聞きたい。
「いや、いつも頼むやつじゃないんだなーと思って。珍しくね?」
まさか俺への当てつけか。分かった気でいるんじゃねえよ的な。そうは言ったって、玄くん毎回同じの頼んでるじゃん?
「……別に。飽きただけ」
「あっ、そっすか……」
絶対にそんなわけはないと思うが。何か彼の中で不動の一位が揺らぐ出来事があったんだろうか、と推察してみる。
「お待たせしましたー」