能ある狼は牙を隠す
最もらしいことを述べたふりをしたが、二人がすれ違う未来を見たくないという自衛でもあった。
しかしこれが本日最大の地雷だったらしい。
「……は、何言ってんの」
じと、と俺を睨んだ玄は、苦々しげに吐き出した。
「いま告っても振られるに決まってんだろ」
「…………は?」
タイム。いま俺の目の前にいる男は本当に狼谷玄ですか? ついこないだまで、女の子なんてよりどりみどりだったあの狼谷玄?
何かめちゃくちゃ可愛くなっちゃってんですけど!
「いやいやいや玄くん、まじ? それまじで言ってる?」
何でそんなに小心者になってんだ。いつものポーカーフェイスはどこいった。
ちょっとやめて、拗ねた顔しないで。俺がきゅんとしちゃうから。
危ない何かに目覚める寸前で思いとどまり、深呼吸で落ち着く。
「百戦錬磨の名が廃るぞ! 男を見せろ!」
「お前、まじでうるさい。ほんと黙って」
はあ、と気だるげに頭を掻いた玄は、「だからだよ」と零した。
「だからだめなの。俺には顔と、……あっちのテクくらいしか取り柄ないから」
「ぶっ、」