能ある狼は牙を隠す
突然のカミングアウトに、口に含んだ液体を噴き出しそうになった。
「おっまえ……あけすけすぎだろ!」
「うるせえよ。どっちも羊ちゃんには意味ないし。もう手詰まりなんだって」
「あーはいはいそうですか……」
その二つがあるだけで、両手を挙げて彼女に志願する女の子のなんと多いことか。
まあ確かに、玄に憧れる子と怖がる子で大別されるが、白さんは圧倒的に後者だろう。
テーブル上に置いてあった玄のスマホ画面が、不意にパッと明るくなった。そこに視線を落とした持ち主は、すぐさま手を伸ばして操作し始める。
途端、彼の口元が綻び、目尻も力なく垂れ下がった。その反応に嫌でも察してしまう。
「白さん?」
「うん」
画面を注視したまま短く肯定し、玄は何やら文字を打ち込んでいた。
もうただの恋する乙女じゃねえか……。
「ちょくちょく連絡取ってんの?」
「毎日してる」
毎日!? 俺からの連絡、丸三日は平気で無視する玄が!?
しかしマメだな、と感心やら傷心やらで忙しない胸中である。
「へー……毎日って、話のネタ尽きない?」