能ある狼は牙を隠す
無情にも告げられたその言葉に、私はとうとう頭を垂れた。
狼谷、というのはさっき決まったばかりの、男子の文化委員。
彼と一緒だというのもあって、私は心底落ち込んでいた。
「許せ羊! こればかりは私も代わってやれない!」
「うん……じゃんけん練習しておく……」
がしりと私の両肩を掴んだあかりちゃんに、力なく返答する。
教室の一番後ろの窓側。
頬杖をついて退屈そうに外の景色を眺めている狼谷くんは、果たして自分が文化委員になったと分かっているんだろうか。
彼の様子を観察していると、その横顔がふと動いた。
――あ。
面白いくらいしっかりと目が合って、私は反射的に顔ごと逸らす。
やましいことは何もないのに、心臓が早鐘を打っていた。
びっくりしたー……。
盗み見ていたのがバレてちょっとだけ気まずいというか、申し訳ない。
「今日の放課後、最初の委員会がある。各自教室を確認して参加するように」
普段は早く放課後になれと思うのに、それが例外になるのは今日が初めてだった。