能ある狼は牙を隠す


非常に頼もしい申し出だったけれど、私はゆるく首を振った。


「大丈夫だよ。狼谷くん、想像してたよりも普通の人だったから」

「普通の人って……羊の中で元々どういう位置付けだったのよ彼は……」


呆れたようにカナちゃんがウインナーを口に運ぶ。

それと、と私は微笑んだ。


「私、狼谷くんと友達になったから、大丈夫だよ」


前に女の子に質問されていた時、彼は私のことをクラスメイトだと言った。
だけど、今朝は友達だと。そう答えたのだ。


「友達? 何その不穏な感じ……契約とかじゃないよね?」

「ごめんだけど私もそう思ったわ。取引でもしてんの?」


未だに訝しんでいる二人に、どうしたものかと首を捻る。


「真面目な羊があんなのとつるんでたら、みんな心配するって。そのうち授業さぼりだしたら笑えないからね」

「あはは、それはないよ。授業聞かないとテスト大変だもん」


あかりちゃんは至って真面目に諭すけれど、結局友達とはいえ委員会の時くらいしか関わりはないし。


「あー、そっか」


カナちゃんが唐突に呟く。


「ヒツジがオオカミに食べられることばっかり考えてたけど、ヒツジが噛み付くことだって有り得るよねえ……」

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