能ある狼は牙を隠す
*
だからつまり、狼谷くんを羊が更生させればいいんだよ。
昼休みにカナちゃんが放った言葉が、脳内でぐるぐると回っていた。
更生って、そんな大袈裟な。
私が何か施したところで、昨日みたいに彼を怒らせてしまうだけのような気がする。
それに、彼には彼なりのポリシーとか、こだわりとか、そういうものがあると思う。
私が「違う」と思ったものでも、彼にとってはそれが正解なのかもしれなくて。
「あ、あのっ、白さん!」
帰りのホームルームが終わって教室が騒がしい。
考え事をしていた私は我に返って、声の主を振り返った。
「田沼さん? どうしたの?」
彼女が話しかけてくるなんて珍しい。
田沼さんはとっても真面目で、休み時間はいつも読書に勤しんでいる。
「あの、その……」
「うん?」
少しずり落ちた眼鏡をくいっと上げて、田沼さんは口ごもった。
彼女は抱えていた日誌を私に差し出すと、そのまま勢い良く頭を下げる。
「すみません! 代わりに日誌を書いてもらえませんか!」
そんな大きな声出せるんだ!?
思わず驚いて目を見開いた。完全にクラスの視線を集めてしまって、羞恥に心拍数が上がる。
「た、田沼さん顔上げて! みんな見てるから!」
だからつまり、狼谷くんを羊が更生させればいいんだよ。
昼休みにカナちゃんが放った言葉が、脳内でぐるぐると回っていた。
更生って、そんな大袈裟な。
私が何か施したところで、昨日みたいに彼を怒らせてしまうだけのような気がする。
それに、彼には彼なりのポリシーとか、こだわりとか、そういうものがあると思う。
私が「違う」と思ったものでも、彼にとってはそれが正解なのかもしれなくて。
「あ、あのっ、白さん!」
帰りのホームルームが終わって教室が騒がしい。
考え事をしていた私は我に返って、声の主を振り返った。
「田沼さん? どうしたの?」
彼女が話しかけてくるなんて珍しい。
田沼さんはとっても真面目で、休み時間はいつも読書に勤しんでいる。
「あの、その……」
「うん?」
少しずり落ちた眼鏡をくいっと上げて、田沼さんは口ごもった。
彼女は抱えていた日誌を私に差し出すと、そのまま勢い良く頭を下げる。
「すみません! 代わりに日誌を書いてもらえませんか!」
そんな大きな声出せるんだ!?
思わず驚いて目を見開いた。完全にクラスの視線を集めてしまって、羞恥に心拍数が上がる。
「た、田沼さん顔上げて! みんな見てるから!」