能ある狼は牙を隠す
私の言葉にカナちゃんも「まあ確かにね」と頷いて、それから首を傾げた。
「ていうか、いつの間に田沼さんと仲良くなったの?」
「え? 昨日初めて話しかけられたよ?」
「……初絡みで頼み事って。意外としたたかなのかね、彼女」
そんな論評をして、カナちゃんはそのまま日誌を抱えた。
「今日は私が日誌書くよ。羊は黒板お願いね」
「え! 今日も手伝ってくれるの……?」
「当たり前でしょ〜。ほら、早く終わらせるよ」
ぽんぽん、と背中を叩かれて、冗談抜きに涙が出るかと思った。
持つべきものは友達だ……と謎に緩んだ涙腺を引き締めて、私は黒板に向かった。
――とまあ、これがここ二日間の振り返りだ。
もしかして? ともはや若干期待していたまであるかもしれないけれど、今日も今日とてそれは起こった。
「すみません、白さん……本当に、申し訳ないです……」
木曜日。今日は委員会があるから、できれば頼まれたくなかったというのが本音。
だから、私はささやかに意見を述べた。
「えっと、私今日委員会があって……他の人に頼んでもらってもいいかな?」
私がそう言うや否や、田沼さんは顔を上げて詰め寄ってくる。
「そ、そんな! あ、いや……ごめんなさい。でもお願いします、白さんじゃないとだめなんです……!」