能ある狼は牙を隠す
*
「お疲れ様でしたー!」
「売り上げ上々! 打ち上げは焼肉で!」
学級委員二人の朗らかな労いに、いえーい、と歓声が上がる。
文化祭二日目も無事に終了し、教室内は花が咲いたように盛り上がっていた。
あとは後夜祭を残すのみで、今は待機しながら後片付けを行っている。
文化委員としては、円滑に文化祭が終わったことが何よりも安心だ。ようやく慌ただしい毎日から解放されるのかと思うと、本当に涙が出る。
鼻歌交じりで作業したいところだけれど、浮かれた気持ちをぐっと堪えた。……つもりでも、体はすっかり気を抜いていたらしい。
「いっ……!」
がんっ、と割と生々しい音を立てて、教室のドアに額をぶつけた。引き戸の溝に少し躓き、抱えていた段ボールに気を取られていたのだ。
思わず壁に寄りかかり、数秒項垂れる。
結構痛かった……いやでも、コケてたんこぶできたとか、情けなさすぎて死ねるかもしれない……。
「大丈夫?」
じんじんと頭の中を駆け巡る痛みに耐えていると、背後から声が飛んできた。
途端、心臓がエンジン全開で稼働し出す。
「あっ……え、狼谷くん……」
「お疲れ様でしたー!」
「売り上げ上々! 打ち上げは焼肉で!」
学級委員二人の朗らかな労いに、いえーい、と歓声が上がる。
文化祭二日目も無事に終了し、教室内は花が咲いたように盛り上がっていた。
あとは後夜祭を残すのみで、今は待機しながら後片付けを行っている。
文化委員としては、円滑に文化祭が終わったことが何よりも安心だ。ようやく慌ただしい毎日から解放されるのかと思うと、本当に涙が出る。
鼻歌交じりで作業したいところだけれど、浮かれた気持ちをぐっと堪えた。……つもりでも、体はすっかり気を抜いていたらしい。
「いっ……!」
がんっ、と割と生々しい音を立てて、教室のドアに額をぶつけた。引き戸の溝に少し躓き、抱えていた段ボールに気を取られていたのだ。
思わず壁に寄りかかり、数秒項垂れる。
結構痛かった……いやでも、コケてたんこぶできたとか、情けなさすぎて死ねるかもしれない……。
「大丈夫?」
じんじんと頭の中を駆け巡る痛みに耐えていると、背後から声が飛んできた。
途端、心臓がエンジン全開で稼働し出す。
「あっ……え、狼谷くん……」