能ある狼は牙を隠す
背後から遠慮がちにかかった声に、冷や汗が噴き出す。
オイル切れのロボットのようにギギギ、と振り返った私を見て、カナちゃんが笑い転げた。
「か、カナちゃ、何で笑って……」
「いやっ……そんな分かりやすく動揺する人っているんだなあと思って」
恥ずかしいやら情けないやら。
目尻を拭うカナちゃんを複雑な気持ちで見やる。
私は大きく深呼吸をして、勢い良く頭を下げた。
「今まで何も言わなくてごめん! 信用してなかったとか、全然そういうことじゃなくて……あの、色々忙しなくてタイミングが」
言い募る私に、カナちゃんは「分かってたよ」と苦笑する。
「まあ何となくそうかな? って思ってたしね。信用されてないとかは思ってないよ」
「何となく、そうかな……?」
「いつかこうなるんだろうなとは腹括ってたけどねー、想像以上に羊がアグレッシブだったなあ」
それは一体どういった意味合いだろう!?
自分の言動を思い返してみたけれど、特にこれといった答えは見つからなかった。