能ある狼は牙を隠す



文化祭は無事に終わったものの、片付けや反省などが付き纏った。
早速行われた委員会が終わり、軽く体を伸ばす。

今朝は狼谷くんと教室に入るなり、クラスのみんなから注目されてしまって。もともと噂が流れていた影響からか、過度に驚いている人はいなかった。

とはいえ、あかりちゃんや九栗さんからは弾丸のごとく質問を次々とぶつけられ、慌ただしい一日だった。

提出物を職員室へ届けに行って、狼谷くんと二人で廊下を歩く。
朝はあれだけ会話をしていたというのに今はお互い無言で、それが気恥ずかしさを助長した。


「……羊ちゃん」


放課後の閑散とした空間に、彼の声が響く。
返事の代わりに私が首を傾げると、狼谷くんはそのまま話し出した。


「あの時のことなんだけど……あの、他校の奴が乗り込んできた時のこと」


言いにくそうに、気まずそうに言葉を紡ぐ彼の様子を見て、何となく、これから大事な話をするのかなと思った。


「確かに前まではそういうこととかあったし、してたんだけど……あれは本当にだいぶ前の話っていうか、かなり今更なやつだったっていうか」

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