能ある狼は牙を隠す
あー、とか、うー、とか。歯切れ悪く説明する狼谷くん。
彼の言いたいことがいまいち分からなくて、私の首の角度はますます曲がる。
「つまり、その……羊ちゃんに告白した時は、誰ともそういうことしてなかったから。ほんとに。これだけは信じて」
そこまで言われて、ようやく理解した。
彼は恐れている。自分の気持ちが私に偽物だと思われているんじゃないか、と。
正直、彼のこれまでの行いが好ましかったかと問われれば、そうではない。でもそれは私の価値観を押し付けるものではないし、あくまで彼の自由だ。
そして朝の彼の言葉を借りるなら――許せるのか、というふうに聞かれたとして。結論から言ってしまうと、許せる。
正確に言えば、許してしまっている。そこは惚れた弱みというか、そんなものだ。
でもだからといって、あの日の彼の言葉が嘘だとは思っていないし、ちゃんと受け止めている。
「今朝は浮かれてたけど、今日一日考えてた。羊ちゃんが気持ち伝えてくれた時すっごい嬉しかったけど、でも俺、羊ちゃんのことずっと不安にさせてたんだなって」
「不安……?」
視線を宙にふらつかせながら、脳内で記憶を辿った。
狼谷くんが言う。
「俺が他の女の子と関わりあるって、思ってたんだよね?」