能ある狼は牙を隠す


我慢なんて、到底無理な話だったんだ。
だって俺はこんなに欲深くて狡くて、やっぱり報われたがっている。心のどこかでずっと、彼女からの愛を欲していたのだから。

一度口にしてしまうと彼女への気持ちに抑制が効かなくなった。今まで鍵をかけていたものが全て、水のように流れ出る。


「好き、好き。ほんとに好き。大好き……やっと言える、好きだよ……」


罪悪感も後悔もなく、自分の気持ちを伝えることができる。そのことに何よりも安心した。

好き、と言う度に自分が満たされていくような気分になる。彼女への気持ちを許されたような気がして。
ただ想うだけでこんなに幸せになれるだなんて、今までの自分は知るわけがなかった。


「羊ちゃん、好き……」

「えっ、か、狼谷くん!?」

「可愛い……好き……」


絶対に、死んでも守り抜く。彼女だけはずっと俺の宝物。
愛おしい。その瞳も、頬も、髪も、彼女を構成するもの全て。

ようやく手に入れた。彼女自ら俺の腕の中へ飛び込んできてくれたんだ。

もう絶対に、手放すわけがない。

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