能ある狼は牙を隠す
*
「ええと、白 羊です。よろしくお願いします」
委員会が始まる前の教室内。
隣の席に座る狼谷くんに、私は頭を下げて自己紹介をしていた。
彼は切れ長の目を少し見開くと、僅かに首を傾げて笑う。
「いやいや、どうしたの改まって。さっき教室で言ってたし、知ってるよ」
「え! 先生の話、聞いてたの?」
驚いて口から出てしまった自分の言葉に、しまったと背筋が凍った。
狼谷くんは遅刻早退欠席を厭わない。
小学生の時からずっと皆勤賞の私にとって、彼は完全に異質だった。
どうしても真面目からは程遠い印象で、この前廊下で男子生徒の胸倉を掴んでいるところを見たこともある。
「あっ、えっと今のは違くて! その……ごめんなさい!」
私の狼谷くんに対する第一印象は、「怖い人」だった。
そのイメージは今も拭えない。彼の機嫌を損ねたら一発二発、殴られるんじゃないかと怯えていたのだ。
拳を膝の上で力強く握る。
ああどうしよう。怒らせちゃったかな、とぐるぐる考えていた時、
「はは、別に謝んなくていいよ」
「ええと、白 羊です。よろしくお願いします」
委員会が始まる前の教室内。
隣の席に座る狼谷くんに、私は頭を下げて自己紹介をしていた。
彼は切れ長の目を少し見開くと、僅かに首を傾げて笑う。
「いやいや、どうしたの改まって。さっき教室で言ってたし、知ってるよ」
「え! 先生の話、聞いてたの?」
驚いて口から出てしまった自分の言葉に、しまったと背筋が凍った。
狼谷くんは遅刻早退欠席を厭わない。
小学生の時からずっと皆勤賞の私にとって、彼は完全に異質だった。
どうしても真面目からは程遠い印象で、この前廊下で男子生徒の胸倉を掴んでいるところを見たこともある。
「あっ、えっと今のは違くて! その……ごめんなさい!」
私の狼谷くんに対する第一印象は、「怖い人」だった。
そのイメージは今も拭えない。彼の機嫌を損ねたら一発二発、殴られるんじゃないかと怯えていたのだ。
拳を膝の上で力強く握る。
ああどうしよう。怒らせちゃったかな、とぐるぐる考えていた時、
「はは、別に謝んなくていいよ」