能ある狼は牙を隠す



「狼谷くんって、血液型何型?」


バスを降りて夜道を歩いた。
最後まで送ると言って譲らなかった彼に折れて、二人でゆっくり歩幅を合わせる。


「はは、どうしたのいきなり」

「えっ、いや……ちょっと気になって」


私、狼谷くんのこと何も知らないなあ。
ふとそう思って、手始めに血液型を聞いてみた。

彼は私の好みを不思議と把握しているというか、合わせてくれる。でも私はそんな器用なことはできないし、直接聞くしかない。


「俺はA型だよ」


端的に回答を終えた狼谷くんに、少し拍子抜けしてしまう。


「じゃあ、私は何型でしょうか」

「O型でしょ?」

「え! 正解!」


初対面の人にはA型っぽいと言われることが多いから、一発で当てられるとは思わなかった。
何だかまた狼谷くんに先を越された気がして、ちょっと悔しい。


「……私、狼谷くんのこと何も知らないね」


自分なりに気持ちを伝えているつもりだけれど、全然つり合っていない気がする。

零れた本音は思いのほか暗い声をしていて、いけない、と首を振った。
新しい話題を提供しようと口を開きかけた時、繋いでいた彼の手に力がこもる。


「知ってるよ」

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