能ある狼は牙を隠す
*
「狼谷くんって、血液型何型?」
バスを降りて夜道を歩いた。
最後まで送ると言って譲らなかった彼に折れて、二人でゆっくり歩幅を合わせる。
「はは、どうしたのいきなり」
「えっ、いや……ちょっと気になって」
私、狼谷くんのこと何も知らないなあ。
ふとそう思って、手始めに血液型を聞いてみた。
彼は私の好みを不思議と把握しているというか、合わせてくれる。でも私はそんな器用なことはできないし、直接聞くしかない。
「俺はA型だよ」
端的に回答を終えた狼谷くんに、少し拍子抜けしてしまう。
「じゃあ、私は何型でしょうか」
「O型でしょ?」
「え! 正解!」
初対面の人にはA型っぽいと言われることが多いから、一発で当てられるとは思わなかった。
何だかまた狼谷くんに先を越された気がして、ちょっと悔しい。
「……私、狼谷くんのこと何も知らないね」
自分なりに気持ちを伝えているつもりだけれど、全然つり合っていない気がする。
零れた本音は思いのほか暗い声をしていて、いけない、と首を振った。
新しい話題を提供しようと口を開きかけた時、繋いでいた彼の手に力がこもる。
「知ってるよ」
「狼谷くんって、血液型何型?」
バスを降りて夜道を歩いた。
最後まで送ると言って譲らなかった彼に折れて、二人でゆっくり歩幅を合わせる。
「はは、どうしたのいきなり」
「えっ、いや……ちょっと気になって」
私、狼谷くんのこと何も知らないなあ。
ふとそう思って、手始めに血液型を聞いてみた。
彼は私の好みを不思議と把握しているというか、合わせてくれる。でも私はそんな器用なことはできないし、直接聞くしかない。
「俺はA型だよ」
端的に回答を終えた狼谷くんに、少し拍子抜けしてしまう。
「じゃあ、私は何型でしょうか」
「O型でしょ?」
「え! 正解!」
初対面の人にはA型っぽいと言われることが多いから、一発で当てられるとは思わなかった。
何だかまた狼谷くんに先を越された気がして、ちょっと悔しい。
「……私、狼谷くんのこと何も知らないね」
自分なりに気持ちを伝えているつもりだけれど、全然つり合っていない気がする。
零れた本音は思いのほか暗い声をしていて、いけない、と首を振った。
新しい話題を提供しようと口を開きかけた時、繋いでいた彼の手に力がこもる。
「知ってるよ」