能ある狼は牙を隠す
周章狼狽
「眞鍋〜! そっち行ったぞ!」
「はいはい任せてー!」
手を挙げて軽く伸び上がるあかりちゃんの元に、サッカーボールが飛んでいった。
彼女は太腿でそれを受け止めて、素早くゴールへ向かう。
ゴールデンウィークも終わって、少し日差しが眩しく感じる時期になってきた。
放課後、学校近くの広い公園でこうして体を動かすと汗が滲むくらいには暖かい。
球技大会が今月末に行われるということで、各々休み時間に練習したり、放課後暇な時に集まったりしている。
男子の種目はサッカーとバスケで、女子はバレーと卓球。
私はカナちゃんやあかりちゃんと一緒にバレーをやることになったけれど、あまりにもポンコツすぎてバレー部の子に指導を乞うことになった。
「ちょっとだけとか言ってたけど、普通に試合に混じっちゃってるよね、あかり」
カナちゃんが隣で少し呆れたように息を吐く。
元々アグレッシブなところもあって、あかりちゃんはすんなりと男子の輪に溶け込んでいた。
短く切り揃えられた髪の毛が楽しそうに揺れている。
「まあ眞鍋さんはバレーも上手だったから、問題ないけど……」
苦笑してそう述べたのは、バレー部の九栗さんだ。
彼女の言葉に、私は思わず「うっ」と声を漏らす。
「ご、ごめんね……私、ほんとに使い物にならなくて……」