能ある狼は牙を隠す


神妙な面持ちで問うてきた様子に、思わず目を見開いた。

え? なに? 俺、なんか試されてんの?


「え〜……まあ、うん。あるよ」

「それって、彼女?」


質問を重ねられて、ますます困惑してしまう。
本当に珍しい。いや、珍しいというか、らしくない。

西本さんとは連絡先を交換していて、ちょくちょくやり取りする仲ではあった。
といっても、きっかけはお互いの友人の件で。二人の恋路をさり気なく応援してあげよう、といった具合に情報交換をしていた。

白さんの変化を西本さんから聞いていたこともあって、俺は二人がいずれ結ばれるだろうと確信を持っていたのだ。


「そーだね。彼女かな」


こんな俺だけど、まあ一応付き合ったら尽くすタイプなんですよ。と、そんな情報は不要だと思われるので黙っておく。

中学生の頃、初めての彼女と初めてのキスをした。あの時の俺は可愛かった。何せガチガチに緊張して、手すら自分から繋げなかったのだ。

当時の彼女は一つ年上で、だからこそ甘えていた部分もある。
そんな俺に愛想を尽かしたのか、彼女は残酷にも別れ際にこう言い放った。


『岬って、必死だよね。なんかいつも余裕なさそう』

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