能ある狼は牙を隠す
以水救水
上ばかり眺めていたからか、首が疲れてしまった。
頭上で響く悲鳴に肩をすくめる。宙を走るジェットコースターは瞬く間に過ぎ去っていった。
「多分こっちで合ってると思うんだけどなー。てかやっぱり羊を一人で行かせなくて正解だよ、暗くて余計に分かりづらいし」
カナちゃんが言いつつマップを睨む。
入れ物が可愛いから、と屋台でポップコーンを買ったあかりちゃんは、食べ切れないと踏んだのか、さっきから朱南ちゃんと二人で消化作業に徹していた。
修学旅行三日目の今日は大阪にやって来た。市内のテーマパークを朝から回っている。
夕方からホテルに戻るまでの時間はカップルで過ごすのが恒例、とみんなに口酸っぱく言われ、津山くんたちの班と合流しようということになった。
「あ、いたいた。おーい、津山ー!」
ぶんぶんと手を振る朱南ちゃんの声に、鮮やかな黄色のパーカーを羽織った津山くんが振り返る。キャラクターが大きくプリントされた派手なデザイン。しっかり楽しんでるなあ、と頬が緩んだ。
「おー、何食ってんの? ポップコーン?」
「ちょうど良かった。男子ども、お腹空いたろ? 食いたまえ」
「いや俺らもさっきキャラメル味食って飽き飽きしてんのよ」