能ある狼は牙を隠す
友達を全員見送って、さてと、と時間を確認する。
バスの時刻表と見比べて、顔をしかめた。
「あちゃー……」
次のバス、三十分後だ……。
部活が終わる時間にしては早すぎるし、何もない日にしては遅すぎる。
この微妙な時間帯のバスは、他の時間帯よりも本数が少ない。
仕方ない、公園のベンチにでも座って待ってよう。
明日までの課題はあったっけ、と首を捻っていた時だった。
「帰んないの?」
前方から飛んできた声に顔を上げる。
コートの方から歩いてきたのか、狼谷くんがブレザーを肩にかけてこちらを見ていた。
「狼谷くん……お疲れ様」
「ん、お疲れ」
男子も今終わったようだ。
自転車のかごにリュックを放り入れる人、タオルで汗を拭う人、そして目の前には狼谷くんがいる。
「バスの時間がなくて……今待ってるところ」
「そうなんだ」
平坦な声でそう返した狼谷くんは、そうするのが当たり前かのように私の隣に腰を下ろした。
えっ、と思わず口から漏らした私に、彼は視線を寄越してくる。
「羊ちゃんさ、」
「え、う、うん」
「さっき俺のこと見てたでしょ」