能ある狼は牙を隠す
あかりが謎に腕まくりをして気合いを入れ始めた。
ずんずんと進んでいくムードメーカーたちの後ろに続こうとした時。
「あー、わり。俺ちょっとあっちでお土産買ってきていい?」
苦笑気味に告げたのは、意外にも津山くんだった。
偏見だけど、一番ホラー耐性がなさそうな坂井くんですら黙って行こうとしていたのに。
「えーっ、津山ノリ悪!」
「お前さては怖いんだろ? そういや昼間も頑なにそういう系乗らなかったもんな?」
やいのやいのとみんなに突っつかれ、彼は困りきった顔で曖昧に受け流す。
私はその輪から出て、すぐ近くのショッピングストアへ足を運んだ。
「あ、ちょっとカナ! どこ行くの〜!」
「私もお土産買いたいからパスで! 津山くん行こー」
軽く手を挙げ声を張る。
あかりは「もー、仕方ないなあ」と不服そうに零したけれど、あっさり切り替えて背を向けた。
四人がアトラクションへ向かうのを横目に、私は歩を進める。
津山くんは隣に並んでくると、戸惑ったように問うてきた。
「……行かなくて良かったの?」
「うん、別にすっごい乗りたいわけじゃないから」