能ある狼は牙を隠す
彼が本当に怖いものが苦手なのかは知らないし、本当にお土産を買いたかったのかもしれないし。
とにかく真相はどうでもいいんだけれど、あのままだと津山くんが無理やりにでも連れて行かれそうだった。
店内に入って適当に商品を眺めていると、「ごめん」と謝罪が飛んでくる。
「ほんとはここで買うものとかないんだよね。西本さん何か買うなら全然気にしないで見ていいから」
普段通りの明るい笑顔に戻った彼が言う。
そっか、と私も平坦なトーンで答えて顔を上げた。
「私もお土産もう買ったんだよね。どうしよっか、違うとこ見て時間潰す?」
津山くんが目を見開く。
「あー……まじか。それはほんとごめん。気ぃ遣わせちゃったね」
「いや、一人だけ乗らないっていうのも空気悪くしちゃうし。苦手なら仕方ないと思うよ」
率先して盛り上げるタイプの彼が尻込みすると、それだけで場の空気が盛り下がる。テーマパークに一人だけ取り残しておくというのも薄情がすぎるし、「じゃあやめよう」となるのがオチだ。
「ちょっと混んできたから出よっか」
この時間帯になるとやはりお土産を求めて沢山の人が店内にやって来る。
冷やかし続けるわけにもいかなくなったので、私は彼にそう促した。
「ああ……うん、そうだね」