能ある狼は牙を隠す


一口、二口飲んで、盛大なため息。
そんな津山くんは視線だけちらりと私に向け、弱々しく喉を震わせた。


「マジでごめん。ちょー情けないわ、俺」


誤魔化すように笑うわけでもなく、冗談交じりに言うわけでもなく。
心底落ち込んだ表情で彼は詫びた。


「いやいいよ。苦手なんでしょ」

「うん、まあ……そうだけど」


くっそカッコ悪いじゃん。
と、そう付け足した津山くんに、意図せず吹き出してしまう。


「ちょ、何でそこで笑うの? 酷くない?」

「だってさあ……そんなん今更だなって」


眉根を寄せた彼が「今更?」と首を捻った。


「正直言うと、津山くんのことかっこいい〜って思ったことないんだよね」

「えっ、いきなり辛辣すぎない? 親しき仲にも礼儀ありって言うよね?」

「これくらいの冗談許してくれる仲だと思ったんだけど違う?」


違くないけど、とむくれた津山くんが、何だかとっても幼い。

じっと見つめていると、彼が怪訝そうに口を開いた。


「な、なに?」

「うーん……まあ、確かに顔はかっこいいよね。顔は」

「俺、泣いていい?」

「冗談だって」

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