能ある狼は牙を隠す
ちぅ、と音を立てて首筋に吸いつかれた。
いい加減この行為には慣れてきたので、叱る余裕はある。
「え、あっ、待って……! 玄くん、や、」
唇が下へ下へと皮膚を辿っていく。
鎖骨の辺りをゆっくり舐められ、それから軽く食まれる。
また首筋に戻ってきたかと思えば、先程とは反対側にちくりと痛みが走って、「印」をつけられたと悟った。
「玄くん、もう、大丈夫……! ついてる! ついてるから!」
いつもは一度つけたら終わるはずなのに、今日は全然終わる気配がない。
彼の背中をたたいて促すと、耳元に吐息が降ってくる。
「だめ。こんなんじゃ全然足りない……もっと沢山つけないと……」
「ひぁ、」
つ、と熱い舌が耳の中をなぞった。耐えきれずに漏れてしまった声が情けなくて、口を押さえる。
「ん、いい子……声、我慢しててね……」
「ん、う、」
どうしようどうしようどうしよう! なんか玄くんがいつもと違う!
ぞわぞわと背中からせり上がってくる感覚が、未知すぎて怖い。
「あー……羊ちゃん……好き、キスしたい。噛みつきたい。食べちゃいたい。その先も、全部……もっともっとしたい……」