能ある狼は牙を隠す
はあ、と彼の口から漏れた吐息が熱い。その唇が優しく私のものと重なって、吸いつくように何度か震えた。
「俺は羊ちゃんのだから、いくらでも好きにしていいよ。羊ちゃんがしたいなら縛りつけといて?」
「そっ、そんなことしないよ……!」
「そう? 残念」
少し高めのトーン。彼が嬉しい時の証だ。
「俺は羊ちゃんのこと、誰にも見せないで独り占めしたいって思ってるよ」
突然のカミングアウトに面食らう。
玄くんは目を細めると、私の頬に手を添えて続けた。
「どこにも出さずに閉じ込めておきたいし、四六時中羊ちゃんのこと考えてる。……羊ちゃんがいない将来とか、もう想像できない」
それはあまりにも熱烈な告白で、切実な願望だった。言われた途端、体がみるみるうちに熱くなって、それなのに全然嫌じゃない。
むしろ、私は。
「わ、私も玄くんのこと、独り占めしたい……し、好きすぎて変になっちゃいそうで……」
まさか自分の中に燃えたぎるような欲があると思っていなかった。玄くんと一緒にいればいるほど、好きが募っておかしくなってしまう。
「……あーあ。またそんな可愛いこと言っちゃって」