能ある狼は牙を隠す


はあ、と彼の口から漏れた吐息が熱い。その唇が優しく私のものと重なって、吸いつくように何度か震えた。


「俺は羊ちゃんのだから、いくらでも好きにしていいよ。羊ちゃんがしたいなら縛りつけといて?」

「そっ、そんなことしないよ……!」

「そう? 残念」


少し高めのトーン。彼が嬉しい時の証だ。


「俺は羊ちゃんのこと、誰にも見せないで独り占めしたいって思ってるよ」


突然のカミングアウトに面食らう。
玄くんは目を細めると、私の頬に手を添えて続けた。


「どこにも出さずに閉じ込めておきたいし、四六時中羊ちゃんのこと考えてる。……羊ちゃんがいない将来とか、もう想像できない」


それはあまりにも熱烈な告白で、切実な願望だった。言われた途端、体がみるみるうちに熱くなって、それなのに全然嫌じゃない。

むしろ、私は。


「わ、私も玄くんのこと、独り占めしたい……し、好きすぎて変になっちゃいそうで……」


まさか自分の中に燃えたぎるような欲があると思っていなかった。玄くんと一緒にいればいるほど、好きが募っておかしくなってしまう。


「……あーあ。またそんな可愛いこと言っちゃって」

< 498 / 597 >

この作品をシェア

pagetop