能ある狼は牙を隠す
そう言って小首を傾げた彼は、手始めに首筋へ唇を寄せる。
いつものように僅かな痛みが「印」と共に与えられて――何だ、これくらいなら、と油断していた時だった。
「ん……!?」
ぷつ、と何かが外れる感覚と、緩まった首元。彼が制服のリボンを取ってしまったらしい。
「えっ、え、待って、玄くんっ」
「ん? どうしたの」
「いや、あの、何でこんな……」
彼と目が合って、ひゅ、と喉が締まる。
それは捕食者の目で、捕まったら最後、満足いくまで離してはくれない。
「ねえ羊ちゃん、知ってる?」
「なに……?」
「この印、本当は一個じゃだめなんだよ。ちゃんと俺のって分かるように、いっぱいつけないとね」
彼の手がワイシャツの第一ボタンを外す。
鎖骨に舌を這わせた玄くんは、宣言通りそこに強く吸い付いた。
「いっ、」
「ん、ごめんね……痛かった?」
労うように、バードキスが顔中に降ってくる。それに少しほっとして体から力を抜くと、今度は耳朶を甘噛みされた。
「や、玄くん……! 耳、やだぁっ」
「嫌? でもこうやってここ舐めたら、羊ちゃんすーごい可愛い反応してくれるから……」
「ひ、ぅ、」