能ある狼は牙を隠す
*
全く手が動かない。いや、どちらかというと動かせない。途方に暮れている。
机の上にある一枚のプリントは未だにどの欄も埋まっていなくて、それは他ならぬ自分が放棄しているのだから当然だ、と半ば投げやりに視線を落とした。
進路希望調査――今日の最後の授業で全員に配布されたそれは、無慈悲にも現実を突き付けてくる。
顔を上げて教室内を見渡すと、みんな一様に何か書き込んでいたり、考え込んでいたり。この授業時間内に提出できなくてもいいと森先生は言っていたけれど、面倒事は早く終わらせるに限る。
でも、書けない。だって私には何も将来の夢がないから。
夢というか、絶対にこうじゃないと嫌だという強い願いがない。就きたい職業も、行きたい大学も、何も分からない。
この高校を選んだのだって、自分の学力や内申点で行けそうな公立高校の中で一番偏差値が高かったからで、絶対にここが良かったとか、そういうわけじゃない。
なんとはなしに玄くんを見た。彼との以前の会話を思い出して。
『狼谷くんは進路決めてるの?』
『……決めてないよ。羊ちゃんは?』
『私も全然決めてない。やりたいこととかもあんまりよく分かってないし……』
全く手が動かない。いや、どちらかというと動かせない。途方に暮れている。
机の上にある一枚のプリントは未だにどの欄も埋まっていなくて、それは他ならぬ自分が放棄しているのだから当然だ、と半ば投げやりに視線を落とした。
進路希望調査――今日の最後の授業で全員に配布されたそれは、無慈悲にも現実を突き付けてくる。
顔を上げて教室内を見渡すと、みんな一様に何か書き込んでいたり、考え込んでいたり。この授業時間内に提出できなくてもいいと森先生は言っていたけれど、面倒事は早く終わらせるに限る。
でも、書けない。だって私には何も将来の夢がないから。
夢というか、絶対にこうじゃないと嫌だという強い願いがない。就きたい職業も、行きたい大学も、何も分からない。
この高校を選んだのだって、自分の学力や内申点で行けそうな公立高校の中で一番偏差値が高かったからで、絶対にここが良かったとか、そういうわけじゃない。
なんとはなしに玄くんを見た。彼との以前の会話を思い出して。
『狼谷くんは進路決めてるの?』
『……決めてないよ。羊ちゃんは?』
『私も全然決めてない。やりたいこととかもあんまりよく分かってないし……』