能ある狼は牙を隠す


ジャンケンは相変わらず弱い。
教室掃除のゴミ捨ては、チョキを出して負けた私が担うことになった。

軽く先生のチェックを受けて、ようやく解散。
カナちゃんは理科室の掃除当番だと言っていた。終わったら教室に戻るという約束だったので、私は彼女を教室の前で待つことにする。


「あ、白さん」


呼ばれたのは目的の人物ではなく、坂井くんだった。確か彼も理科室の当番だったよなあ、と思い至って、口を開く。


「坂井くん。カナちゃんってまだ来なさそう?」

「ああ、うん。そのことなんだけど、伝言頼まれて」

「伝言?」


何だろう。彼の言葉の続きを待つ。


「西本さん、急用できたみたい。今さっき帰ったよ」

「え!?」


思わず遠慮会釈なく声を上げてしまった。
よっぽど大事か、よっぽど急いでいたのだろうか。ともかくそれは仕方ないとして。
そっかあ。カナちゃんと二人で出掛けるの、楽しみだったんだけどなあ。


「白さん、一緒に帰ってもいい?」

「え? あ、うん……」

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