能ある狼は牙を隠す
グラウンドでは男子サッカー、格技室では女子卓球、そして体育館では男子バスケと女子バレーが行われる。
クラス対抗というのもあって、試合がない時は自分のクラスの他の試合を応援しに行くのが定石だ。
「すいませーん、ちょっと通りますねー」
あかりちゃんが人だかりをものともせず進んでいく。
狼谷くんと津山くんが出るからか、前の方は女子ですっかり埋まっていた。
「ここら辺なら何とか見えそうだね。羊、見える?」
「うん、大丈夫だよ」
どうして名指しされたんだろう、と一瞬首を捻ったけれど、みんなの肩の高さが目に入ってすぐに理解する。
あかりちゃんと九栗さんはスポーツをやっているというのもあるのか、背は高い方だ。
カナちゃんと私は比較的小柄だけれど、私の方が背は低い。
「それではただいまより、第一試合、一年一組対二年三組の試合を始めます」
響き渡った審判の声に、空気が変わった。
整列していた男子たちが散らばって、コートの真ん中に津山くんと一年生の男子が一人。ジャンプボールだ。
ボールは津山くんの押しに倣って相手側に降下し、試合が始まった。
「やば! 津山先輩かっこよすぎ!」
「普段にこにこしてるのにめっちゃ真剣だよ、ギャップ萌え……」