能ある狼は牙を隠す
近くの女子の会話が耳に届いて、津山くんの人気もすごいんだなあと実感する。
恐らく彼女たちは一年生だ。違う学年にも知れ渡っているなんて、本当に有名人。
男子の試合は迫力があるし、聞こえてくる音も荒々しい。
見ているこっちが手に汗握ることもしばしばだ。
下の学年と当たった時は勝てることが多いし、あまり心配はしない。
今のところ順調に試合が運んでいるようで、津山くんが既にゴールを決めていた。
「さっきからあの一年の子、津山くんとボール取り合ってるよね」
カナちゃんがそう呟くので、私は「どの子?」と顔を寄せる。
「ほら、あのガタイがいい子。さっきからずっと――あっ、」
「あっ」
ホイッスルが鳴った。
まさにその一年生の子がシュートを決めたところだ。
そこから流れが少しずつ変わってきて、津山くんたちは動きづらそうにしていた。
「あ〜、やな流れだねこれ。外野の一年も盛り上がっちゃってるし」
あかりちゃんが言うように、相手のクラスの応援にはかなり熱が入っているようだ。
上級生に勝てることは中々ないから、興奮するのはよく分かる。
「あ! も〜、何やってんの津山! また決められちゃったよ」