能ある狼は牙を隠す
*
「忍、どうした?」
体育の授業へ向かおうと、みんなが教室から出て行く。
立ち止まった俺にそう問いかけた声。忘れ物したから先に行ってて、と適当に理由をつけて、踵を返した。
「ごめん、鍵かけるのちょっと待って」
今まさに教室の施錠をしようとしていた体育委員に、俺は後ろから断りを入れる。
「ん? 忘れ物?」
「うん。あ、俺が鍵かけておくから行ってていいよ」
「おー、さんきゅー」
貴重品袋を持って手を挙げた彼から鍵を受け取った。
体育の際は、スマホや財布などを体育委員が全員分集めて、体育館へ持っていく。最初の頃こそ全員しっかり預けていたが、慣れてくると面倒で預けない人も多い。校内で盗難なんて、そうそう起きないだろうという慢心だ。
でも俺は毎回しっかり預けている。だって、
「……ビンゴ」
こういう悪い奴がいるかもしれないからね。
白さんの鞄。内ポケットにしまわれたままの、スマートフォン。
それを自分のブレザーのポケットにしまって、俺は教室を後にした。
「忍、どうした?」
体育の授業へ向かおうと、みんなが教室から出て行く。
立ち止まった俺にそう問いかけた声。忘れ物したから先に行ってて、と適当に理由をつけて、踵を返した。
「ごめん、鍵かけるのちょっと待って」
今まさに教室の施錠をしようとしていた体育委員に、俺は後ろから断りを入れる。
「ん? 忘れ物?」
「うん。あ、俺が鍵かけておくから行ってていいよ」
「おー、さんきゅー」
貴重品袋を持って手を挙げた彼から鍵を受け取った。
体育の際は、スマホや財布などを体育委員が全員分集めて、体育館へ持っていく。最初の頃こそ全員しっかり預けていたが、慣れてくると面倒で預けない人も多い。校内で盗難なんて、そうそう起きないだろうという慢心だ。
でも俺は毎回しっかり預けている。だって、
「……ビンゴ」
こういう悪い奴がいるかもしれないからね。
白さんの鞄。内ポケットにしまわれたままの、スマートフォン。
それを自分のブレザーのポケットにしまって、俺は教室を後にした。