能ある狼は牙を隠す
そっか。私たち、すごく不器用だったんだね。
私もそう。玄くんもそう。伝えるってなんて難しいんだろう。
「奈々ちゃんのことは、もっと早く私にも話して欲しかった」
「……ごめん、」
「一人で解決しようとしないで、私にもちゃんと相談して欲しかった。いきなり避けられるのは、結構辛かったよ」
「うん……ごめん……」
どんどんしょぼくれていく彼が可哀想になってきた。でも、私だって悲しいこと沢山あったんだから、これくらい許されないと困る。
「ねえ、玄くん。前に私が言ったこと覚えてる?」
「え……?」
自分でも記憶をなぞるように、懐かしく思いながら口を開く。
「私は、玄くんに笑ってて欲しいの。私のためだけじゃなくて、自分のために、我慢しないで話して欲しいの」
「羊ちゃん、」
「だって私たち、付き合ってるんだよ。二人で一つなんだよ。どっちも幸せじゃなかったら、意味ないよ」
私たちはあの日、二人でいることを選んだ。それはお互いがお互いを想い合うことで、尊重することで、幸せにしたいと願うこと。
「玄くん、もう一人で頑張るのはやめよう。二人で、幸せになろうよ」