能ある狼は牙を隠す


不器用だから、また作り直しになっちゃうけどさ。それでもやっぱり、壊れたら何度でも、一からやり直すしかないんだよ。

彼は私が言った途端、顔を目一杯歪めて泣いた。嗚咽もしゃくりも止めずに、ひたすら泣いていた。


「……私も、言葉足りなくてごめんね。玄くんがくれた分、全然返せてなくて、ごめんね」

「んん、」


唸り声みたいだ。彼は必死に首を振って、否定してくれているようだけれど。

ああ、何だろう。今とても彼が愛しい。


「玄くん、好きだよ」


彼の拳に自分の手を重ねる。涙と体温と、ない交ぜになって熱かった。
この熱を、愛を、もう手放したくないなと思った。

私の言葉に彼はますます涙を流してしまって、これは重傷だ、と場違いながらも少し笑ってしまう。


「……羊、ちゃ、」

「うん?」


何か言いたいことがあるらしく、彼は呼吸もままならない状態で口を開いた。


「手、出して」

「手?」

「ん、」


こく、と頷いた彼に、私は両手を差し出す。
玄くんはコートのポケットに手を入れると、白い箱のようなものを取り出した。手の平に収まる小さなそれを開けると、彼が私の左手を取る。


「えっ、玄く――」

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