能ある狼は牙を隠す


再び前に向き直った狼谷くんは、椅子に背を預けて足を組んだ。
長くて細い足だなあ、と感心してしまう。

さっきはバレてしまったけれど、今度はこっそりと彼の横顔を窺った。

すっと高い鼻筋に、健康的な白い肌とさらさらの黒髪とのコントラストが目を惹く。
小さい銀のピアスが光を反射して、きらきらと輝いていた。


「文化委員とかまじだるいわ〜。内申点に関係あるって聞いたけどさ〜」

「でも文化祭の打ち上げは豪華って先輩言ってたし! 期待しとこ!」


開きっぱなしのドアから、女子生徒が二人入って来る。
そのうちの一人がふとこちらへ視線を投げると、短いスカートを翻して駆け寄ってきた。


「え〜! (げん)も文化委員だったの〜?」


どうやら狼谷くんの知り合いらしい。
甘い匂いが鼻腔をくすぐって、彼女が香水を身に纏っていると知った。


「そー、寝てたらなんか俺に決まってた」

「だめじゃんちゃんと起きてないと〜」


すぐ側で談笑する二人に、居心地の悪さを感じてしまう。
もうなんというか、ここだけきらきらしてる。スクールカースト上位みたいな、そんな感じ。


「この子、初めて見るけど『友達』?」

< 6 / 597 >

この作品をシェア

pagetop