能ある狼は牙を隠す
再び前に向き直った狼谷くんは、椅子に背を預けて足を組んだ。
長くて細い足だなあ、と感心してしまう。
さっきはバレてしまったけれど、今度はこっそりと彼の横顔を窺った。
すっと高い鼻筋に、健康的な白い肌とさらさらの黒髪とのコントラストが目を惹く。
小さい銀のピアスが光を反射して、きらきらと輝いていた。
「文化委員とかまじだるいわ〜。内申点に関係あるって聞いたけどさ〜」
「でも文化祭の打ち上げは豪華って先輩言ってたし! 期待しとこ!」
開きっぱなしのドアから、女子生徒が二人入って来る。
そのうちの一人がふとこちらへ視線を投げると、短いスカートを翻して駆け寄ってきた。
「え〜! 玄も文化委員だったの〜?」
どうやら狼谷くんの知り合いらしい。
甘い匂いが鼻腔をくすぐって、彼女が香水を身に纏っていると知った。
「そー、寝てたらなんか俺に決まってた」
「だめじゃんちゃんと起きてないと〜」
すぐ側で談笑する二人に、居心地の悪さを感じてしまう。
もうなんというか、ここだけきらきらしてる。スクールカースト上位みたいな、そんな感じ。
「この子、初めて見るけど『友達』?」