能ある狼は牙を隠す


高校に入ってからは同じクラスだということもあって、よくつるむようになった。
俺が一方的に押しかけたり遊びに連れ出したりするのが主だが、断るのが面倒なのか、大体付き合ってくれる。

そんな彼が毎日決まって飲んでいるのは、購買で売っているイチゴミルクだ。
放課後によく寄るカフェで頼むのも、ベリークリームラテ。

ピアスは一年の頃から今までずっと同じものをつけているし、リュックなんて中学の頃のやつをそのまま使っている。

意外と物を大切にするタイプなのか、と最初は失礼なことを思ったが、多分違う。
玄は気に入ったものが見つかれば、それだけを愛用し続けるタチなんだと思う。

だから、人間関係においてもきっと、そうなのだ。
唯一無二を見つけた時、彼はそこにしか目が向かなくなるのだと思う。

俺はふと自分の手に伝わる熱を思い出して、なるほどな、と苦笑した。


「だから学校はやめとけって言ってんのに……強情だわ」


こういうことになっちゃうでしょうが。

彼自身、まだ掴みきれていないのだろう。
実際、本当にそうなのかは分からないし、白黒つけるには早すぎる。

でも何より、あの時の彼の表情が物語っていた。

――その子に触るな、と。

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