能ある狼は牙を隠す
私の方をちらりと見て、女の子が言う。
その目が鋭利なものを突きつけられているかのようで、少し肝が冷えた。
「あー……いや、違う。普通にクラスメート」
狼谷くんが歯切れ悪く答える。
確かにクラスメートだけど、「友達?」って聞かれてわざわざ否定しなくても良くないですかね……。
いや、まあただのクラスメートだけどさ……。
釈然としない気持ちでいると、女の子は「ふーん」と私を一瞥して口角を上げた。
「ま、玄のタイプじゃないもんね。全然」
とばっちりだ――――!
内心悲鳴を上げたものの表面上は平静を装った私を、誰か褒めて欲しい。
とんでもない空気に困っていたところへ、先生がやってきた。
委員会が始まって、ようやく私は救われたような気持ちで姿勢を正す。
その後、何気なくしてしまった質問から、私は更に自分の首を締めることになった。