能ある狼は牙を隠す
海千山千
自分の席が窓側じゃなくて良かったと思う。
今日は朝から気温が高くて、昼下がりの今は教室に惜しみなく日光が降り注いでいた。
五時間目は本当に眠い。
つらつらと苦手な英語を先生がずっと音読してるから、尚更眠い。
意識を飛ばしそうになる直前で思いとどまって、私はふと手元に視線を落とした。
こないだの小テスト。右上に三十二点と赤文字で書いてある。
何回見ても変わらないその数字に、軽くため息をついた。
「おーい、いいか。みんな球技大会明けでボーッとしてるけど、今月末には模試だからな。それで、来月は期末テストだ」
教室内のだるだるとした雰囲気に、先生が突然そんな爆弾を投下する。
イベントの後って、どうしても授業のやる気が出ない。最近更に暑くなってきたのも理由の一つだ。
球技大会の総合優勝は三年生のクラスで、私たち二年三組もかなり健闘した。
女子卓球で準決勝まで残ったり、男子バスケも三年生との試合で一度勝ったり、なかなか盛り上がったのだ。
余韻に浸る間もなく授業はすぐに始まったけれど、みんな燃え尽きてしまったかのように伸び切っている。
またいつもの日常が繰り返されるのだ。
だけれど、私の日常において、少し変わったことが一つ。