能ある狼は牙を隠す


「さっきの、彼女さん?」


委員会が終わって、配布資料に書き込みをしていた時だった。
今日は何をしたのか、とかを簡単に書いて担任の先生に提出しなくちゃいけない。

ずっと無言なのも気まずくて、私は思わず聞いてしまった。

狼谷くんは一瞬こちらを見てから、すぐに視線を戻して口を開く。


「彼女じゃないよ」


端的な回答に、踏み込むべきじゃなかったかな、と反省した。
もっと無難な質問にしよう。好きな食べ物、とか?


「彼女じゃなくて、お友達ね」

「お、お友達……?」


彼の言葉に、瞬き数回。
あんな過激な友達っているんだ……多分あの子、狼谷くんのこと好きだと思うけどな……。


「うん、お友達。……って、白さんには通じなさそうだけど」

「え?」


いきなり母国語の理解度を馬鹿にされて、面食らった。
そんな私を尻目に、狼谷くんは席を立つ。


「早く出して帰ろう」

「あ、うん、そうだね」


急いで最後の一行を書き殴って、私も椅子を引いた。

至って真面目に委員会に出席した狼谷くんを、先生は大層褒めていた。
こっちは普段から真面目に生活しているのに、何だかずるい。


「あ! 玄〜!」

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