能ある狼は牙を隠す
*
静かな空間に、本のページを捲る音が時折響く。
周りは読書をしている人がほとんどだ。まだテスト期間じゃないから、よほど心配性じゃない限り本格的に勉強する人はいないだろう。
図書室は私語厳禁というわけでもなくて、ぽつぽつと話すくらいなら黙認されている。
私と狼谷くんは机を挟んで向かい合わせに座った。
「羊ちゃん、この前の小テストって何点だったの」
開口一番、狼谷くんはそう聞いてきた。
教科書を取り出そうとしていた私は、「え」と思わぬ質問に固まる。
「できればテスト用紙見せて欲しいんだよね。どこが苦手なのか分からないから」
「あ、えーと、そうだよね……」
正論だ。ド正論だ。
でも余裕で赤点のテストなんて、見せたらなんて言われるんだろう……。
かといって教えてもらう手前、見せないわけにもいかない。
私は渋々ファイルからテスト用紙を抜き出して、狼谷くんに差し出した。
「どうぞ……」
彼は受け取って、それからまじまじと用紙を見ると、
「ひどいね」
「か、狼谷くん……!」
静かな空間に、本のページを捲る音が時折響く。
周りは読書をしている人がほとんどだ。まだテスト期間じゃないから、よほど心配性じゃない限り本格的に勉強する人はいないだろう。
図書室は私語厳禁というわけでもなくて、ぽつぽつと話すくらいなら黙認されている。
私と狼谷くんは机を挟んで向かい合わせに座った。
「羊ちゃん、この前の小テストって何点だったの」
開口一番、狼谷くんはそう聞いてきた。
教科書を取り出そうとしていた私は、「え」と思わぬ質問に固まる。
「できればテスト用紙見せて欲しいんだよね。どこが苦手なのか分からないから」
「あ、えーと、そうだよね……」
正論だ。ド正論だ。
でも余裕で赤点のテストなんて、見せたらなんて言われるんだろう……。
かといって教えてもらう手前、見せないわけにもいかない。
私は渋々ファイルからテスト用紙を抜き出して、狼谷くんに差し出した。
「どうぞ……」
彼は受け取って、それからまじまじと用紙を見ると、
「ひどいね」
「か、狼谷くん……!」