能ある狼は牙を隠す


身も蓋もない。そしてそんな評価をもらって非常に情けない。

狼谷くんは「冗談だよ」と軽く口元を緩めた。


「でも、本当に意外。羊ちゃんって頭いいと思ってた」

「全然だよ……いつもテスト前必死だもん……」


小さい頃からよく言われる。私は真面目だけど、要領が悪い。

気を抜けば補習まっしぐらだから、いつも何とか食らいついてようやく人並みくらいの成績に落ち着いている。


「まあ単語は暗記でどうにかなるとして、文法だと思うよ。英文の捉え方っていうか」


なんてことないように告げる狼谷くんに、私は首を傾げた。


「これから受験もあるし、今のうちに固めた方がいいと思う。まだ間に合うよ」


受験、という単語に思わず顔をしかめる。
高校に入る時は推薦でどうにかしたタチだから、正直試験で勝負するのは気が滅入ってしまう。


「狼谷くん偉いねえ……受験とか、まだ考えたくないよ」


やっぱり人って見かけによらないし、噂にもよらないなあ。
私より狼谷くんの方がよっぽど将来のことちゃんと考えていると思う。


「狼谷くんは進路決めてるの?」

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