能ある狼は牙を隠す


特に意味があったわけでも、興味があったわけでもなく。
話の流れで聞いてみただけだった。


「……決めてないよ。羊ちゃんは?」

「私も全然決めてない。やりたいこととかもあんまりよく分かってないし……」


専門学校に進む子なんかはもう将来の夢も目標も決まっていて、羨ましいなと思う。


「羊ちゃんさ。英文読む時、一語ずつ読んでたりしない?」


そろそろ本題に移るべきだと判断したのか、狼谷くんはテスト用紙の英文を指さした。


「え、うん……みんなそうじゃないの?」

「一語一語止まりながら読むよりも、文の構造理解して全体的に読んだ方が絶対いいよ。例えばこれ。主語がどこまでか分かる?」

「うーんと、ここ、かな?」

「そう。ここまでが主語で、これが述語ね。だから最初は『主語がこうなったんだな』っていうアバウトな認識で素早く目を通すと、長文も時間足りなくならないと思う」


シャーペンで斜線を引いた狼谷くんの手元を見ながら、彼の話に耳を傾ける。


「この問題間違えてるから、もっかい解いてみよ。これの主語と述語はどうなってる?」

「えっと、ここで区切れるから……そっか、こっちが動詞だったんだ」

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