能ある狼は牙を隠す
平身低頭
毎週木曜日は委員会で、週に一回狼谷くんと話すのがいつもの流れ。
それが、先週から月曜日と金曜日は狼谷くんに勉強を見てもらう日になった。
「最初狼谷くんに勉強見てもらうって聞いた時は何の冗談かと思ったけど。まあ無事に続いてるみたいで良かった」
前の席に座り私の手元を覗き込むカナちゃんは、心配してくれていたらしい。
未だに彼女の中では「狼谷くん=野蛮」というイメージが拭えないようなので、こまめに近況報告をするようにしている。
机の上には自分のノートと、狼谷くんのノート。
家で勉強する時に参考にしたいと言ったら、快く貸してくれたのだ。
「へー。白のノート綺麗だなー」
突然にょきっと顔を出したのは、隣の席の霧島くんだった。
彼の目が捉えているのは狼谷くんのノートで、私は咄嗟に口を開く。
「あ、こっちは狼谷くんのノートなんだ。すごく綺麗で分かりやすいよね」
「えっ、そうなの? あいつちゃんとノート取ってんだ〜」
「霧島くんが取らなさすぎなんだよ……」